【Live Report】Loscil / Arovane Japan Tour at CIRCUS

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【Live Report】Loscil / Arovane Japan Tour at CIRCUS
2014.11.22(Sat.) Venue:CIRCUS(OSAKA) OPEN/START 22:00 Live:Loscil(Kranky) Arovane(n5MD) Ametsub (nothings66) Eadonmm (Day Tripper Records/IdleMoments) + [VJ:Tatsuya Fujimoto] [DJ] Lady Citizen(AN/AY)JOKEI.(SOLARIS/INCIDENT)

ダンス・フロアに積むビート)
零時を回る頃、Ametsubのライヴ・セットが始まった。精緻なガラス細工のようにフラジャイルで、玲瓏とした音の粒がフロアを満たしてゆく。スクリーンには、ドライヴレコーダーで撮影したムーヴィーが映し出される。景色には果てなく広がる雪原や山岳といった、寂寞さを感じさせるもので、メロウな電子音と相まって純度の高い空間を演出していた。セット後半からは徐々にビートを導入し、踊っている人の姿が増えていった。

次は、この日のメイン・アクト1組目、Loscilだ。予めタイムテーブルが各媒体で公開されていたことも影響しているのか、Loscil登場予定時刻が近づくと、一気にダンス・フロアの人口密度が上がる。ブースに上ったScott Morganは、ステージを照らしていた緑色のスポットライトを消すようスタッフに合図し、照明が落とされたことを確認した後、静かにライヴをスタートさせた。
特筆すべきは、その映像で素材を正円状にくりぬいたものをスクリーン中央部に移し出す方法を多用していたことだろうか。用いられた素材は波打つ水面やダム湖といった“水”に関わる風景が主で、前作『Sketches from New Brighton』(2012年、kranky)のアートワークを彷彿させるダークグリーンを基調とした加工から確たる美学を感じ取れた。新作『Sea Island』(2014年、kranky)収録曲を中心としたセットは終始、ヨーロピアン映画のように幽玄で、序盤はざわついていたフロアはいつの間にか静謐さに包まれていた。
Loscilの音楽と映像は、ポリティカルだ。直接的なメッセージやステートメントの形を取らないで、現代社会のあり方やわたし達のライフスタイルに再考を促すメソッドを使いこなしている。表面上は凪いでいるように見えても、内心では怒りを湛えて、時化が続いている。前述した正円の映像演出も、作意は全くないであろうが、日章旗との類似性を感じもした。

Arovaneのサウンドの機械的記名性)
深夜2時。いったん音を切り、機材チェックを兼ねての短い転換を挟み、Arovaneが舞台に上がる。約9年ぶりの新作『Ve Palor』(n5MD、2013年)を再現すると言うより、マシーン・ミュージックのアブストラクトな側面を強調したものであった。取っ付きやすさ、 ポップさ、言い換えれば「エンターテインメントとしての完成度」に色気を出さず、リズムや響きの快さで聴かせようとしていた。アルバムではAphex TwinやAutechre、Plastikmanといった固有名を比較に出せる電子音楽としての色彩が豊かであったが、ライヴでは機械そのものの音に焦点を当てた、控えめな音作りをしているという印象を受けた。
その強い作家性は、敢えて引き合いに出すのであれば、砂原良徳に連なるスタイルと言えるのではないか。近年のインタビューに拠れば(https://www.peaksilence.com /2014/11/12/arovane-interview-part2/)ギリシャやイラン出身の電子音楽家とのコラボレーション作品の制作を終えているということなので、あまりブランクを空けず、次の作品が届けられることを楽しみとしたい。

今回の大阪公演のヴェニューは、近畿 地方のダンス&ミュージック愛好家間ではお馴染みということで、フロアもリラックスしたムードが流れ、総じてゆったりした一夜となった。なお、今回の日本ツアーは全3公演が組まれたが、オールナイト開催となったのはこの日のみとなった。
しかしどちらかと言えば、もともとイヴニング興行として監修していたテーブルをそのまま4~5時間後ろ倒しにして持ってきたような風味で、慎ましやか、という形容がより似つかわしかったように思う。

文=河村 昌輝
協力=松浦 達

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