[Interview] shotahirama


– 最初にhiramaさんの音楽遍歴を教えてください。 いつくらいから音楽に興味を持ち始めましたか?

最近自分の新作アルバムNICE DOLL TO TALKのプロモーションもあって、いろいろな所でインタビューを受けているのですが、必ずこの質問に出会しますね。決まってこう答えています、僕は某中古レコード屋で19だか20だかで働き始めるのですが、そこをオリジンに捉えていますね。もちろんそんな会社に入社するぐらいですから、だいぶ早い/幼い時期から音楽に強い興味はあっただろうし、他の何より特別強い想いがあった訳なんですけど。この様な質問で、具体的に答えを指し示すには、このレコード屋に入社してから、っていうのが一番都合いいかなぁって。

– どのような音楽的なバックグランドを経て今のスタイルがあるのでしょうか? また、ニューヨーク出身と言うことで、そういった海外経験も今の音楽に影響していると思いますか?

僕個人史においての音楽的背景、一言で表すならば『逸脱』です。パンクやオルタナティヴ、ノイズにビザール、逸脱なものへの憧れから始まって、やがて自分の中で噛み砕いては共感し、いつしか自分自身が『とある何かにおいて逸脱する』という状況/状態が一番自分らしくいられる心地よいポジションになっていて。ニューヨークでの10数年にも及ぶ生活というのも強く影響していると感じます。その『逸脱』という考えに。何処にも属さないし、少しみんなと考えがずれてると思われる事になんの抵抗も無かったですし。常にとある事象においての逸脱点を考え生活する。でも軸となるものはぶれないように、インナーマッスルは鍛えておく。例えば、シーンの流行に一切捕われないように、とか。鈍感ではダメですよ、敏感だからこそ、俊敏に動けるんです。

– 前回のアルバムが42曲20分に対して、今回のアルバムは1曲14分のみという構成になっていますが、 こういった構成に至った経緯等があれば教えてください。 何かコンセプト的なものや心境の変化等はありましたか?

僕の作品はとにかく『短い』ですよね、尺が(笑)。正直な話、僕は長尺の楽曲は聴き込めないんです、途中で飛ばしてしまうか、アルバム全編を聴き終える前に針をあげてしまう。聴覚の集中力が持続しないんですよ。これ、作り手に話を置き換えても、残念ながら僕の性質は変わらなくて。特別、音の響きに特化した作品を作っているので、凄く細かいトラックメイクになるんです。メロディもないしリズムもない分余計に。どんなに根気よく、どんなに絶好調でも、どんなに耳の通りがいい日でも、結局1年半かけて10分か20分のアルバムしか作れないんです。なので、コンセプトというよりは、むしろ今作に関しては特別コンセプトを用意せずに極力音の響きに集中しようとした結果がそういった構成に僕を導いたのです。アルバムは短いですが、無駄な響きは一切収録されていないと思います。

– 影響を受けたアーティストを教えてください。 また、音楽以外からもアーティストshotahiramaを形成しているものがあれば教えてください。

もちろんこれまで自分の作品に帯コメントを提供して頂いたevala(port, ATAK)さんやAmetsubさんには多大なる影響を受けています。それから、僕はSIGNALDADAというレーベルを運営していながらmAtterというレーベルにも所属しているのですが、ここのレーベルオーナーであるYukitomo Hamasaki氏にも大きな影響を受けています。それからそれから、音楽以外で僕を形成しているのは、ほんと常々公言していますが、娘と妻ですかね。娘がいるから頑張れるし、妻がいるから人間として最低限のマナーが保たれている(笑)生活は決して楽では無いですが、彼女達が居なかったら僕の人生はもっと酷いことになっていたと思います。想像するだけでゾッとする
ような(笑)

– レーベルオーナーとしても活動されていますが、レーベルSIGNALDADAのコンセプト/スタイル等を教えてください。

2010年に個人事務所として設立して、当初はいっちょまえにコンセプトに忠実なスタイルを貫いていたのですが、なんだったかな、『文学的思想におけるイメージと音楽の形態的な響き』みたいなコンセプトがあったのですが、今となってはSIGNALDADAというよりはshotahiramaがイメージとして前に突出し過ぎてる感も否めないです(苦笑)というのも、ほんとに僕ひとりで動かしているので、曲作りからCDが完成して、こういったプロモーションも含め、売り込み営業までなんでも。作品こそぶれませんが、ほんと今となってはレーベルコンセプトなんてどうでもいいです。要するに、僕自身がレーベルコンセプトないしは『カラー』なので、僕のやりたくない事はやらない、僕がやりたい事をやる、っていう大雑把な究極論にまで達している。急に言葉の肉付きが悪い/歯切れの悪い言い回しで申し訳ないですが、ほんとそんなもんです。それよりも、CD作品に僕の今とすべてが注ぎ込まれているし、なんだろ、イベント企画やこういったインタビューで出てくる僕の一面が僕のそのときのトレンドです。でも、でもですよ、自分を擁護する形になるかもしれませんが、逆にコンセプトだけしか浮き彫りにならない、なんてのもこのご時世古いと思うんですよ。

– レーベルのオンラインストアでは他のレーベルの作品も販売していますが、どういったところに魅力を感じていますか

レーベルのオンラインストアというとGARBAGE COLLECTIONですね。レーベル設立の1年後ぐらいに開設したもので、僕個人的にはレーベルも小売業としてしっかり機能させなければ、というなんだか真面目な側面を確保ないしは提示出来ればと思ってスタートさせました。こういう窓口があるないではだいぶ印象が違いますもんね。お金に困ってたのもあるし(笑)それに、どこどこの店頭で売れたとか、ディストリビューターを通して売れたとか、そういう事よりも、僕にとって買い手と直接繋がれる感じも今の時代わりかしスペシャルな出来事だったし。とはいえ、自分のレーベル作品だけではショップが機能しない。ヴァリエーションを持たせる為に徐々に他レーベル作品の取り扱いを始めてみました。僕がSIGNALDADA以前に運営していたEdition NIkOというレーベルのハンドメイド系CDRや(ほとんど廃盤ですね)それに僕がこれまでに携わってきた他レーベルの作品。あ、そしてこれだ。これならこの質問に直接的な答えが出せる。僕がとても親交のある香港のサウンドアーティストEdwin LoによるRabbit Travelogueレーベルの作品、これはフィールドレコーディングに特化した作品で僕個人的にもフィーレコで音楽を創る人なので強烈なシンパシーを感じましたね。なによりも「香港」という特別な区域で、誰にも知られずひっそりフィールドレコーディング。彼の作品には「孤独感」や「空虚感」が音像に纏わりついていて、僕のテーマに強くリンクしています。とても魅力を感じています。

– 昨今のCD不況と言われている状況で、今後のレーベルとしての方向性や考えなどがあれば教えてください。 また、アーティストとしての立場においてデジタル配信でリリースすることに関してはどういった考えをお持ちでしょうか。

僕は、というかSIGNALDADAはまだまだCDでのリリースを続けますよ。僕の世代が最後なんですかね、CDというフィジカルへ想いを馳せるのは。僕より下だと、ファイルやネットレーベルですもん。ですもん、って否定的な響きで捉えられては困るので、注意書きしますが、僕はあくまでもCDという物質的な重みも音楽の重要事項に含んでいるので。そういった考えがある以上、対立的な構図は致し方ない、けどそれは決して、ファイルリリースを否定している事ではありません、ファイルにはファイルの利便性やその内wavやmp3なんて拡張子にも感覚的なフィジカルというのが生まれてくるんだと思いますし。要するに時代性ですね。僕は単純にCDというフィジカルに置いて特別な想いがあるし、そんなくだらない想いすら捨てきれていないし、なんだろ、冒頭でも触れましたが、これも僕の逸脱点です。ファイル中心の世の中でも、なんとかCDで進めていく。ぶれないオルタナティヴで居たいけど、うーん、わからん、ファイルでリリースするものも予定として今後ありますし(笑)

– 最後に今後の活動予定を教えてください。

今スペイン語を勉強しています。というのも、ヴォーカルアルバムを次回作に考えていて、恐らく今作NICE DOLL TO TALKの冒頭数分で聴く事の出来る過剰なカットアップな構成になるとは思うのですが、3枚目は僕自身が歌います。英語が僕の母国語なんですが、英語の発音に飽きてしまって。これに何か別のイントネーションやアクセントが入ったら、と考えてスペイン語を選びました。erinaちゃんという良き友人が僕のスペイン語の先生なのですが、彼女に懸かってますね、僕がどれだけスペイン語を短期間で取得できるか。ほんとに面白いんですよ、スパニッシュの響きって。英語と混ざると凄い新鮮なんです。他には、shotahirama and the broken flowersというバンドが活動開始になります。Mamoru Yokotaというギタリストを僕のコンピューターに取り込んでマニピュレートして作品を創っていきます。ピークサイレンス様でも今後情報を取り扱って頂けると嬉しいです(笑)

shotahirama – NICE DOLL TO TALK

2012.10.7 リリース
Label:SIGNALDADA
Cat:SIGNAL006

1. Nothing But You And Me (14:22)

shotahiramaプロフィール


「ノイズ、具体音が曲想的な音楽に」(Sound&Recording誌 11年5月号)「ドラスティックに引き裂かれる時間と空間」(音楽家 evala /port, ATAK)とデビューアルバムが話題を呼び、続く2枚目では「繰り返し聴いて徐々に染み込む良さ」(音楽家 Ametsub)「ドラマ性と奔放さを兼ね備えた電子音楽」(Sound&Recording誌 12年11月号)と評されたニューヨーク出身の音楽家 shotahirama(平間翔太) 。2010年に音楽レーベルとして原盤の企画制作及び音楽出版他、CDライナーノーツの翻訳/英訳を請け負う等の事業を展開する SIGNALDADA を設立。2011年のデビューアルバム以降これまでに2枚のソロCDアルバムをリリースしている。

翻訳家/通訳としては、これまでに2011年ドイツ・ビーレフェルトで劇場公開された古舘徹夫氏による演劇作品 Death Fragments – Buchner, 23 years old にて脚本英訳を担当、スイスで国内最高峰と呼ばれる芸術賞スイス・アートアワードを受賞したアーティスト Pe Lang の日本初展示にてインタビュアー/通訳として参加。2012年には東京都写真美術館が主宰する第4回恵比寿映像祭に出展された mAtter キュレーション展示 Between VISUAL and SPATIAL にインタビュアー/通訳として参加している。その他、幾つかのCD作品にてライナー、歌詞翻訳等も担当する。

http://www.signaldada.com

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