[FEATURES] shotahirama’s Best 5 Music of 2012


ANDREW CHALK – FORTY-NINE VIEWS IN RHAPSODIES’ WAVE SERENE

オルガナムのジャックマン、エックスメンのヒュージャックマンじゃないですよ、オルガナムの音響錬金術師(音響的エリクシールを日常的かつ素朴な物質から解放/抽出しちゃおう的な)ディヴィッド・ジャックマン。オーラもしくは英国トゥウェンティーハーツの貴公子とでも呼んじゃおうかしらブリットドローンのトーテムであるダレン・テイト(ポッターでもライルズでもないよ)。さらにはステイプルトンよりもチベットよりも生ける呪術感半端無い極まりないHNASのクリストフ・ヒーマン。と、挙げればキリがない彼らスーパースターがこぞってコラボしたくなる魅惑のこの男、アンドリュー・チョーク。僕が今回2012年ベストにピックアップしたこのアルバム、日本語タイトルが『狂詩曲の波間に浮かぶ四十九の風景』という。ていう。波間の狭間のその隙間から、こっそり海底を覗き込んでは浮かびあがる竜宮城の幻影、海の都で使われる最上級のティッシュペーパーボックスよろしく玉手箱みたいなとにもかくにも極上のスリップケースパッケージ。2012年で1番でしたね、このハンドメイドジャケットは。勿論ファラウェイプレス。というか、チョークの名前を出すまでに相当数の文字を消費してしまったがごめんなさい、内容に触れるまでもさらに文字を打ち込むのでもうしばらくの辛抱を。そもそも僕はチョークコレクターだったので初期チョーク作品で把握している範囲内はすべて買い占めていました。遠い昔の僕がまだ独身の頃ですが。特別86年のICRから06年のファラウェイ連作までスリーポップラーズももちろん、すべて。が、06年以降Daisuke Suzuki先生共作のものと『夜のバイオリン』のテープス以外は買えていない。ということで久しぶりっすチョーク。久しぶりっすな耳が過大評価に僕を追い込んだって?いやいや、僕も音楽家です、音響家です。響きには常に耳を傾けてきた男だす。ぶひ。49曲というか49篇の物語。すべてが波間に浮かぶ笹舟、風景、映し鏡の世界か君自身か。もちろんCDをプレイヤーにセットするだけでは何一つ浮かび上がるはずもなく、しかし実体験として四十九の風景は確かに浮かび上がってしまった。この音響職人による魔術的で幽玄で最強”匠”神な1枚、ネ申な1枚。僕は人に勧める他無い。

ESPLENDOR GEOMETRICO – EL ACERO DEL PARTIDO / HEROE DEL TRABAJO

再発ものでもこれは紛れもなく2012年に起きた奇跡でして。ベスト5に絞るのは意外と難しくて、このEGをピックアップする際に悩んでいたのが、SMEGMA『EVER AND ANON』それからTHE BROKEN PENIS ORCHESTRA『Broken Runzel.eb Penis Gurgel.er Orchestra』などで、うむ、個人的に最も悩んだランクはやはりここ。とはいえ、やはりEG信者の僕がここで声を大にしない限り誰にも触れられずにこのヴァイナルはしれっと年を越してしまうのではないかと想いに思い。ようやくピックアップ。だってさ、X-TGも選んでEGも選んで、ってなんだか面倒くさいというかフィジカル的に臭そうと思われても嫌なのアタシ。さて、書きますか。脱線が多いですね、逸脱が。僕は。スパニッシュテクノイズながらも上品なイタリア寄り複雑系マリネッティ未来派野郎共ことEG、と長い文言ですがEGに関して何かを書くとき必ずこれを出だしに書いていました(あれは思い起こせばアルバイト時代、某中古レコード屋でも某大型CDショップでもせっせとコメントを書き綴る毎日)彼らがまだ10代だった頃のお話、1982年ですよ、カセット作品EG01が先のリリースだったか、このヴァイナルが先のリリースだったか僕の中では定まっていないのですが、どうやら群衆はこちらがファーストワークスだと言い張るので。鉄工場アンセムとでも呼べる、何千回何万回も聴きましたこの作品、聴こえますかこの錆び付いた反復運動が。ウィキペディアによると「鉄」ってのは湿った空気中では容易に錆を生じ、、と。スペインの田舎町で誰に雇われてるのかも分からない労働者達の肉体的なスメルと精神的なコラプス。毎日の反復運動で崩壊した文明が機械仕掛けに国家の為にと働き続ける。錆び付いたテクノが口ずさむスメルズ・ライク・ア・ワーカーズ・コラプテッド・スピリット。テクノイズ史上最も有名な組曲ではないでしょうか、表面に『政党の鉄則』裏面に『労働者の英雄』やばいやばい興奮してきた。テクノイズジェネシスな1枚が2012年念願の再発、なにが念願って、ヴァイナルリリースです。700枚のナンバリングは多分嘘だけど。もっとあるか、もっとないか。

X-TG – DESERTSHORE/THE FINAL REPORT

このテキストを読む前に、まずはググってみてください。X-TGと。リメインズ・オブ・ジ・スロッビンググリッスルとかいうテキストが浮かび上がってX-TGのサイトがトップに表示されるはず。もうね、それがすべての答えで。批評云々やコメント云々の前に、大前提としてそもそもこれはTGではなく、X-TGという新しいなんらかのグループなのです、というのを念頭にプリーズインプットディスファッキンインフォメーション。つまり、TG居残り組。もっと言うならば「ジェネPがコージーにふられてトチ狂って女の子になってしまう、みんなに引かれて/退かれて逃げ出すようにグループを去る」(某情報筋による奇怪ながらも真実味ダクダク溢れるゴシップからの引用:僕は10年近くこのゴシップ、前半部分だが、これを信じている)その後のTGなんてのは僕個人的にはTGではないと。つまり冒頭で触れた「TGではなくこれはX-TGという新しいグループであーる」方程式が介在して今作を聴いた訳だ。ましてや事実、脈打つ舵取り役のピーターが亡くなってしまっている。脈打つ男根と呼ばれ続けてきたこのグループ、最早完全不整脈という事だ。前置きが長い。これで満足してしまいそうだ。しかし肝心の中身に何も触れていない。だが飽きてきた。今すぐ簡潔にテキストを進めなければ読者に申し訳ない。かろうじてここまで目を通して頂いている読者の方に正確確実な僕の感想をお伝えしなければさすがにこれは炎上しそうだ。こいつ何も書いてないって。中身がないって。では伝えよう。X-TGのデビューアルバムなら満足、これがTGなら超絶不満。デザートショアに関してはグレンのコンストラクトヴィスツによる83年作品のサイコジェネティカ、これが頭ないしは耳を過ったなぁ、耽美な耳鳴りに不安定でもない不穏感不安感。わりかしコントロールされている範囲。お下品な排泄具音まるで無し。だけどね、キャリアが違う、芸歴が違う、技術が違う、造り込みのレヴェルが違う。それでもこれでも圧巻の完成度。この評価はTGの七光り的ネームバリューかどうかは闇に葬って。補足、ブリクサやマークアーモンドのせいでサンクスギヴィングみたいになってるのは事実。つってもね、かっこいいよね。

BEACH HOUSE – BLOOM

僕はオールミュージックラバーズです。なにも毎日LAFMSだNWWだサーシャペレスだヴィヴェンザだなんて聴いてる訳ではなくて。根本的にジャズとクラシック以外ならなんでも率先してヴァイナルに針を落とし続けることもう直き三十路。世間一般的に言えばぁ、もう直き三十路なんてぇ、男が好んで聴く音楽なんてぇ、オルガナムでもなくてブロークンペニスオーケストラでもないはずなのは重々承知しています。早いとこ結婚出来て良かった。女の子好きなのに女の子に嫌悪感しか抱かせない悪趣味コレクターことわたくしshotahirama。だから、だからって接続詞は違うか、なんだろ、もういいや。それはさておき、ビーチハウス大好き。僕は親交のある音楽ライターの久保正樹さんがつぶやく彼のツイッターでこのビーチハウスの名を初めて耳にしたのですが、しかも今年。まぁこのバンドに関して言えば僕の知識なんて浅はかで、とんでもなく後乗り、それでもともかくとにかく良かったんです。僕のリアル世代で言うとストロークス以降のオルタナ(ジュリアン・カサブランカスも大ファンだと公言してますね)もしくは今風に言えばなんですか、ブルックリンムーヴメント以降?ゼロ年代ドリームポップの代名詞?さてはて、なんですか、なんていうんですか、わからんとです。憂鬱で空虚感剥き出しの熟女よろしくセックスアピールと受け取るのは僕だけか、たまらなく悲しい発生発音で紡がれるヴィクトリアの物語。虚無感と孤独感が恐ろしい程スローモーションで後ろに迫ってくる唯一無二のシンセやらオルガン。聴き終えた後に感じる説明しがたい囲気雰(イキフン/フンイキ、どっちでも可)を神話性という言葉でおしゃれにまとめるには十分。きっと世界のなんだかや人間のなんだかをいろいろと含んでいるであろうとっても貴重な2人の奏でるブルーム/清純さに嘘こそないものの、物珍しさはなく、親しみやすいものの健康的ではない、ポップスの隣近所らへんにいるめんどくさい連中。僕的にはジョニーボーイの04年作品You are the generation that bought more shoes and you get what you deserve以来のグッドソングスでした。もっといえばジュリアン・カサブランカスの09年作品Phrazes for the young以来のグッドアルバム。何故この2タイトルを引き合いにしたかは、ビーチハウスクオリティをその2作に感じるからである。嘘だと思うなら聴いて。

shotahirama – NICE DOLL TO TALK
わぁー!夢みたーい!嘘ー!僕の作品だー!うれしー!ありがとー!こんなテキストになるのも仕方があるまい。だって己の作品を年間ベスト5にぶち込むんだもの。恥知らず。恥さらし?どっち。どっちもか。なんにせよ乙。ステマじゃないよヒラマだよ。まぁ、これもプロモーションの一環としてこの枠ひとつもらったなり!が、しかしだ、いざこれを自分の文章で書き綴るなんてとてもじゃないけど出来ない。ということで、この作品に関して様々なインタビューをこの数ヶ月間受けてきたので、勿論このPeak Silence様にもインタビューページを設けて頂きました。ですので、そちらを読んで買って、読んでは買って、読んで買って!です。以上、自分でした。

Release Info

shotahirama – NICE DOLL TO TALK
2012年10月7日発売: CD, 価格1680円(税込)
ディストリビューション: p*dis/inpartmaint

shotahiramaプロフィール

「ノイズ、具体音が曲想的な音楽に」(Sound&Recording誌 11年5月号)「ドラスティックに引き裂かれる時間と空間」(音楽家 evala /port, ATAK)とデビューアルバムが話題を呼び、続く2枚目では「繰り返し聴いて徐々に染み込む良さ」(音楽家 Ametsub)「ドラマ性と奔放さを兼ね備えた電子音楽」(Sound&Recording誌 12年11月号)と評されたニューヨーク出身の音楽家 shotahirama(平間翔太)。2010年に音楽レーベルとして原盤の企画制作及び音楽出版他、CDライナーノーツの翻訳/英訳を請け負う等の事業を展開する SIGNALDADA を設立。2011年のデビューアルバム以降これまでに2枚のソロCDアルバムをリリースしている。

翻訳家/通訳としては、これまでに2011年ドイツ・ビーレフェルトで劇場公開された古舘徹夫氏による演劇作品 Death Fragments – Buchner, 23 years old にて脚本英訳を担当、スイスで国内最高峰と呼ばれる芸術賞スイス・アートアワードを受賞したアーティスト Pe Lang の日本初展示にてインタビュアー/通訳として参加。2012年には東京都写真美術館が主宰する第4回恵比寿映像祭に出展された mAtterキュレーション展示Between VISUAL and SPATIAL にインタビュアー/通訳として参加している。その他、幾つかのCD作品にてライナー、歌詞翻訳等も担当する。

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